| 02 何処からか聞こえた声 「こんなことを言えば子龍殿には呆れられるかもしれませんが」 「呆れられるようなことをこれから言うという合図ですか」 「最近ふと思うのですよ。何故私は今ここにいるのかと」 「いきなりですね」 「貴方に言っても仕方のないことですけど」 「言わなくても構いませんけど」 「……子龍殿、聞いていますか?」 「聞いていますよ」 「私は殿が訪ねてくる前まで晴耕雨読の生活をしておりまして」 「存じておりますよ」 「偉大な志を持つお方以外は決してお仕えしまいと固く心に誓っておりました」 「そうらしいですね」 「そこに殿がいらっしゃったわけですが」 「何でも、殿の謙虚さと人徳に感服して仕官となったとか」 「それは実は違いますけどそれはまたの機会に」 「はぁ」 「もしもあのまま誰にも仕官しなかったら今どうなっていたのかを考えまして」 「想像できませんね」 「ですが、私は殿にお仕えすることを決めた当時、未来にここまで重宝されるなどとは思ってもいなかったのです」 「それはまぁ…すべて予想通りだったら怖いですからね」 「いえ、大体は私の計算通りでしたけど」 「………」 「軍師ですから。自分の策を成せずにいてどうするんですか」 「何が言いたいんですか」 「話が逸れましたね」 「本題って何なんですか」 「せっかちですね」 「貴方も私も暇じゃないでしょう」 「では本題に入ります。昔の生活を夢に見るのですよ」 「長い前振りでしたね」 「私は家を出たとき、いつか帰ってくる気でいました。今もその気でいますが」 「孔明殿が草庵に帰っておしまいになると、国が働かなくなってしまうと思いますよ」 「私がもし帰りたいと言えば子龍殿はどうなさいますか」 「反対しますし止めますよ」 「ありがとうございます。実はその言葉が聞きたかったのです」 「私じゃなくともそう言うと思いますが」 「そうかもしれませんしそうじゃないかもしれません。ただ私は私の居場所を確認しないと安心できない弱い人間ですから」 「大丈夫ですよ。不安なのはお互い様です。殿が亡くなった今、国を支えているのは貴方です。できる限りは私も協力しますから」 「ええ。都合のいい幻影に立ち止まっている暇が、悲しいことに私には与えられないのですから」 何処からか聞こえた声。 遠い昔の夢の残り香に立ち止まっている余裕は存在しえないのだ。 質問配布元は こちら「SILENT SPEECH 」 |
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