《参》
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気づかなくても構わない、ほんの些細なことでも。
ふとした拍子に妙に気になってくることがある。
そして少し怖くなる。
もしかしたら私は、何か目に見えない大きな流れにそって流されているだけで
私の意志なんてこの世に何の影響も与え得ないのではないかしら、と。
”私”という役割を私がこなしているだけで
別にここにいるのが私でなくても構わないような仕組みがどこかに確立されているのかもしれない、と。
何故なら、こんな気分になるときは大抵…良くないことが起こることが多いのだから……




今度は、どんな波に飲み込まれるのだろう?
今度こそは、何も失いたくないのだけれど……




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「伯約」
もう昼下がりと呼べる時刻の閑散とした食堂に足を踏み入れた姜維は声のした方向へと身体を向ける。
視線の先で軽く手を泳がせている人物は前に城内を案内してもらったこともある、なかなか親しくしてもらっている人物であった。
昼食をのせた盆をもらった足でそのままその人物の元に向かう。
少し近づくと同じ卓に少年と少女(推測するに同世代)がいるのがわかる。
いいのだろうかと目で問う姜維に手振りで大丈夫だと答えた人物に招かれ、卓の空いている席に盆を下ろした。
「こんにちは、趙将軍。今日は遅い昼食ですか?」
「そうだ。漸く仕事に区切りがついて昼食がてら休憩中だな。伯約もこれからか?」
「ええ、はい。先ほど休憩に入ったばかりです」
本当はもっと早くに終わったはすなのだが、遅れたせいでやることが増えてしまったのだ。
遅れた理由が理由で曖昧なことしか言えなかったため、言い訳に時間がかかったのも原因の一つである。
「そんなに仕事が多かった?」
趙雲の隣に座っていた少年が不思議そうに訪ねる。
姜維はどう答えたらいいのかわからずにしばし沈黙した。
「あ、ごめん。拙者は関平。あまりに姜維殿が有名だから…。自己紹介もせず失礼した」
その沈黙を勘違いしたのか、少年が自己紹介をする。…名前を知らなかったのでそれはそれで都合が良かったが、素直で誠実そうな人に気まずい思いをさせるのは本意ではない。
「いえ、ありがとうございます関平殿。ただちょっとどう答えたらいいのかと思って悩んでいたもので…」
ならよかった…と、ほっとしている関平に趙雲が補足説明のように付け加える。
「関平は関羽殿の養子だ。伯約と同世代だな。同世代といえば星彩もだ」
黙って握りを食べている少女に視線をやって趙雲は少女を促した。
「…私は星彩。燕人張飛の娘よ。関平とは幼馴染み、そして劉禅様と婚約しているわ」
淡々としている星彩のせいで流しかけたが、姜維はかろうじて聞き流さずに質問する。
「つまり…貴女は皇太子妃ってことですよね?なんでそんな方がこんなところに…?」
「そう?普通だと思うけど」
平然としている星彩に、姜維はいう言葉がない。
「話が戻って悪いのだが。いつもこんなに昼食の時間が遅れることがないだろう?今日は何かあったのか」
趙雲の言葉に姜維はばつが悪そうに答える。
「遅刻を、してしまって。丞相に叱られてしまいました」
「珍しいな」
姜維は朝の出来事を、確認の意味も含めて話すことにした。
「朝、教えていただいた庭で鍛錬をしていたんですが、ちょうど区切りがついたころ人と会いまして」
「人?」
「はい。やたら派手な人でした」




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